あゆのすけの成長記録

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フィルムスタディ「蝉しぐれ」後半

こんにちは、あゆのすけです。

2020年の夏から始めた蝉しぐれのフィルムスタディが、3月中旬についに終わりました。
主人公が大人になってからの後半について気づいたこと考えたことなど、記録に残しておこうと思います。

 

ーーー 作品 ーーー
映画「蝉しぐれ」 
監督 黒土三男 原作 藤沢周平
主人公 牧文四郎 : 市川染五郎  ヒロイン ふく : 木村佳乃
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蝉しぐれ前半については↓↓↓こちら↓↓↓

ayunosuke.hatenablog.com

 

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(左)ここから後半スタート!・(右)ついにラスト!!



自然の描写がとても美しいのもこの映画の魅力です…。山と海に接する海坂藩(架空の藩)を舞台のこの物語は、厳しくも優しい自然と共に生きる人々の姿が描かれています。

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美しい自然…。時に優しく時に厳しく、人々の生活に寄り添っています。

 

 

1.レイアウトとは?
前半が約2か月ほどで終わったので、後半も年内か年明け早々にも終わるかな?と思っていたのですが、その期待は見事に裏切られ、5か月もかかってしまいました。
というのも、ストーリーが進むにしたがって、蝉しぐれの世界にどんどんはまっていってしまい、どんな瞬間も見逃せない!という気持ちになってしまったからです。

 

レイアウトというのは、フレーム内にモチーフをどのように配置するかということなのですが、その時の方法として三分割法や日の丸構図などなど、いろんなパターンがあるのはよく解説されていることです。
でも、そういったパターンを知っていたらいいレイアウトができるか?というと、なかなかそんな簡単なことではないんですよね。
フィルムスタディをしていて、レイアウトで大事なこと「見てくれる人にその場面で大事なことをわかりやすく伝える」ということだと思いました。じゃぁ、この場面では何を一番伝えたいのか?ということになりますね。そこを押さえて初めてレイアウトの分析が意味を持ってくるのだと思いました。

 

フィルムスタディをするときに大事なこと
1.感動した場面を選ぶ
2.なぜ感動したのか、どこに感動したのかを考える(受け取り手の印象)
3.作り手は何を一番伝えたかったのかを考える(作り手の主張)
4.そのために、どのような構造やレイアウト上の工夫がされているのかを考える。

 

例えば「顔(表情)からその時の感情を伝えたい!」という場合は、顔をアップにして目の位置を主要グリッド上に来るように合わせる…などの工夫が見られました。

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交点の位置に目!!!


物悲しいシーンでは、浜辺で一人ぽつねんと立ち尽くす姿をシルエットで表現する(左側に立ち右側を見ている→過去の後悔を噛み締めている)など。

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過去を思い出す…。

また「ストレスなく見れる画面作りの工夫」というのも、頻繁に登場しました。例えば、背景に柱がある場合、その柱を主要グリッドに合うようにカメラアングルを決めてある、田んぼや道など水平方向のラインが主要グリッド上に来るようになっている…などです。私は2分割と3分割の主要グリッドを描いた透明板を画面に合わせてみていたので、見事なまでに分割線に合わせてくるカメラに感動を通り越して恐ろしさを感じました!すごい!!!

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バッチリ合わせてきて、ちょっと怖い!

 

2.動きを追いかけたい
最初はレイアウトの分析を主にしていたのですが、殺陣のシーンをきっかけに、俳優さんの動きも追いたくなってきて、かなり細かくコマ送りをしながら描いたりもしていました。動いてはいるのですが、見ている人が目が回らないように、固定する場所はしっかり固定していたり、またシルエットのみにして情報量をコントロールしたり、動きの激しいシーンはそれなりに工夫されているのだなあと感動しました。

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殺陣のシーンその1

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殺陣のシーンその2

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女郎屋で脱童貞なるか?!>残念…

 

3.表情をとらえたい
後半になると、心情を伝える場面も多くなってきました。辛い気持ち、切ない気持ち、嬉しい気持ち…見ている人も心揺さぶられるような役者さんの名演技。そういう時のレイアウトは、だいたいとてもシンプルでした。役者さんの演技を邪魔せず、その魅力を可能な限り引き出すような縁の下の力持ち的なレイアウトだと思いました。
そういうシーンになると、役者さんの表情を描きたくなってくるんですね。こうなってくると、フィルムスタディというよりもむしろ顔の模写です。作り手が伝えたいものが表情なのだったら、私もその表情をできる限り再現したいと思いました。おかげさまで、苦手意識の強かった人間の顔もだいぶ抵抗がなくなってきたように思います。

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表情っていいですよね…♪

 

4.格子摸写??
2分割および3分割のグリッドの使い方を軸にフィルムスタディをしていたので、やっていることは完全に格子摸写です。パースの効いた建物なども、グリッドを手掛かりにどのような手順で描いていけば素早く正確に描けるか?ということが、だんだんとわかってきました。クロッキーの時なども、縦横の位置関係を確かめたりするんですが、格子摸写での縦と横を確認する習慣が他の時にも役立っているなと感じています。

 

5.ライティング
ライティングについてはまだ不勉強なのですが、蝉しぐれは夜の暗いシーンが割と多く、そういう場合のライティングはとても勉強になりました。光を当て方によってシルエットやそのふちが強調され(リムライト)暗い夜の印象を保ちつつ、見やすい画面を構成していました。また、明るいシーンでも暗いシルエットで人物のポーズを強調していたりもしました。照明のことはよく知らないけれど、これは相当な職人技なのではないかと思いました。

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暗いのにはっきりわかるの、すごいな!
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言いたいことが伝わるシルエット!

 

6.アイレベルが見つけやすくなった
建物や室内を描くとき、アイレベルがどこにあるのかをまず探します。そうすると、柱や梁などが描きやすいんですね。何度もやってるうちに、割と簡単にアイレベルを割り出せるように名たので、とても重宝しています。

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(中段)すごいローアングル。かっこいい!

 

7.一つの作品を追いかけて
一つの作品を最初から最後まで描く…というのは、正直とても時間がかかるししんどいので、あまりお勧めはできないのですが、私はやってよかったと思います。
というのも、私はフィルムスタディ初心者だったので、あちこちの作品をつまみ食い的にフィルムスタディするよりも、一つの作品の中でどのようにストーリーに合わせてレイアウトされているのかを追いかける方が学びやすかったです。作品や監督の違いによる考え方の違いを考えずに済みんだからだと思います。一貫した方針によるレイアウトを沢山見ることで、癖や法則などに気づくことができ、納得しながらフィルムスタディを続けることができました。2時間の映画だと本当に長くて大変なので、お手軽なところで15分の朝ドラとかでもいいかもしれないですね。

今は内田監督の「鍵泥棒のメソッド」のフィルムスタディをやっています。蝉しぐれよりもかなりあっさりやっているのですが、蝉しぐれの黒土監督との違いも実感できて楽しいです。
蝉しぐれでしっかり基礎ができたので、今後も色んな作品のフィルムスタディをしていきたいと思います!

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フィルムスタディ、楽しいな♪